コレラがやってきた

CALL英語。特殊講義、前期試験の講評、コレラ

幕末狂乱(オルギー)―コレラがやって来た! (朝日選書)

幕末狂乱(オルギー)―コレラがやって来た! (朝日選書)

静岡に残る一次資料をていねいに読み解いて、幕末コレラ流行への反応を浮かび上がらせるもの。桑原町(現函南町)の村名主による年代記、大宮町(現富士宮)の酒屋主人の日記、などが扱われているが、とくに面白いのは、下香貫村(現沼津)と深良村(現裾野)の両村が、コレラ対策として京都吉田神社に参って勧請し、小箱を貰って宮を建てるまでの記録。文字が書ける農民や名主によって、経費の詳細な記録が残っている。吉田神社、けっこうぼったくってますな。当時の人々は、見慣れぬ病を前にして信心・祈祷をおこなうわけだが、この「異国の病」を「アメリカ狐」の仕業として、狼を眷属として祭る三峯神社の御神犬に頼っていたりする。
最終章はコレラを唄う当時の川柳や戯れ唄。なかなかいいですよ。

やまひの流行止めどがない
一ときころりであつけがない
葬い昼夜とぎれない
輿屋の掛け値ハねぎらない
白むくそんりゃうやすくない
戒名つけるに文字がない
亡者ほうむる地所がない

都写真美術館の石内都展のオープニングに誘われるが、断って早寝。