Book of Addresses
Book of Addresses (Meridian: Crossing Aesthetics)
- 作者: Peggy Kamuf
- 出版社/メーカー: Stanford University Press
- 発売日: 2004/12/20
- メディア: ペーパーバック
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第四章のジュディス・バトラー批判は、図式はよくあるものだが、アプローチが変わっている。よく知られているように、バトラーは(生物学的)セックスのほうがむしろ(文化的)ジェンダーによって規定されているのではないかと考えた。その際彼女は、ジェンダーはすでにある生物学的基盤に inscribe(書き込む)のではなく、その基盤を produce(生産する)という二分法を立てている。ふつうこれは、ジェンダーに先行して生物学的セックスを仮定することを拒む姿勢だとみなされた上で、結局ジェンダーのほうを規定的・固定的に捉えてしまっているのじゃないか、と批判されるわけだが、カムフはあくまで、「生産」が「書き込み」よりも基底的だという発想を脱構築的立場からねちねちと批判する。そのうち話が逸れていってデリダのハイデガー論に移り、「二分法なき、男女の別なきセクシュアリティの語り方はあるか」という問題を立てる――というより、そうした問題の立て方の構え自体を問題にする――ところが、いちばん面白かった。