Planet of Slums

会議。「今日は用があって」と一人消え二人消えしていって、最後委員長と事務長とだけ取り残される。中道通 Cinq で食器を買う。犬用だというのは店には内緒だ。

Planet of Slums

Planet of Slums

鳥インフルエンザに続くマイク・デイヴィスの新作は、第三世界で拡大を続けるメガスラム総まくり。現在、都市化とはスラム化のことだ。1980年以降のIMFと世銀の支配下で、公共事業部門が縮小しているなか、都市に仕事が増えているわけではない。たんにそれ以上に農村が荒廃しているがゆえに、職のあてもない人口は増加する。彼らの多くは路上の物売りといった、通常経済の外に生きているがゆえに、古典的な意味での「労働者」ですらない。就業機会が多いから都市が拡大するという古典的テーゼが崩壊しているのだ。世銀は彼らの「自活的経済」をときに賞賛するが、彼らに蓄積の可能性などない。プリコラージュというべきか、既存の材料を使って住む場所をなんとかかんとか工夫し続けるスラム建築を賞賛した建築家、ジョン・ターナーは、貧者の自活の幻想を作り出した点で激しく非難されている。最後はペンタゴンの「これからの戦争は都市にある」という思想からくる戦略について。ペンタゴンは、国連やIMFがやっていないこと、つまり第三世界スラムに踏み込み、それを身体的に経験するということをいまやいちばんやっている機関なのだ……。
不動産取引の実態に注意深いのがこの著者らしい。スラムといえばスクオッティング、不法な建物占拠をまず思い浮かべるが、家賃をきっちりとられているスラムの住人も多い。かつて不法占拠で土地を手にした初代のスラム住人が、そこにさらに小屋を立てて新住人に貸す、というような構造、都市の不動産の上層部とは別の位相の不動産世界もまたあるのだ。
デイヴィスは南米とかには自分で行ったことがあるのだろうと思うが、この本は自分の目で見たルポの要素は一切なく、完全に他文献の積み上げ。しかし世界のあらゆる大都市の情報をめまぐるしく繰り出す驚異的スピード感、それを可能にする電撃的ハードボイルド文体は、彼ならではだ。彼の旧著の訳者が自分でいうのもなんだが、こういうハードボイルド・スタイルというのはじつに英語的なもので、なかなか近いリズムをもった日本語というのが想像しづらいんだよな。