ルート350

CALL英語。特殊講義、Martin Chuzzlewit とナイティンゲール。学会業務@お茶の水(日本英文学会はちゃんとしたオフィスをもっていて、それはお茶の水の研究社ビルにある。業界と研究社の深い関係がよくわかるというものだ。関東支部の事務局はさてどこに置くべきか……)

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ルート350

だいたい難易度の低い順に並んだ短編集。しかけ過剰というか、この物語を語るのになぜこの語りの枠が必要なのかわたしにはよくわからない、と言う場合が多いのだが、それもまた古川日出男の魅力。「物語卵」が畸形的に――というのは、メタ物語が極限まできてふつうの意味での物語が放っぽられてしまうからだが――歌っているように、あらゆる物語は複数の声をもつのだ。8篇すべてが、信じ難いことにそれぞれ違った意味で傑作だと思う。
「飲み物はいるかい」は飯田橋、「カノン」は舞浜、「物語卵」は吉祥寺、「一九九一年、埋め立て地がお台場になる前」はタイトル通りの場所を舞台にしていて、それぞれとても納得いくのだが、とくに飯田橋は、なにかエアポケットのように静かな都心で、ぽっかりと空いた時間を振り返っていて美しい。こうなると、「ストーリーライター、ストーリーダンサー、ストーリーファイター」の、バレエスタジオとキックボクシング・ジムと女子高生作家の部屋の視線の交差点にある幽霊アパートも、どっかにモデルがあるのかしら、と勘繰ってみたり。