英文学会二日目

英文学会二日目。横内一雄「悪魔/セックスの悲しみ――『フィネガンズ・ウェイク』第2部第1章の誘惑物語」。猥褻とも見える下着色当ての場面を、むしろ誘惑から性的成熟への過程に位置づける。『フィネガン』を、まったくふつうの小説として、物語として取り扱うところに感じ入った。
上田敦子「戦争加担者から平和主義者へ―― Vera Brittain の The Dark Tide (1923)を読む」。あまり読まれないブリテンの最初の小説のていねいな読解。しかしこの小説のヒロインの夫、大学教員で後に国連職員になるのだが、ひどい奴ですな。戦時中に看護師として「社会進出」をはたしたブリテンだが、戦後は女の職場が減っていくのを目の当たりにして、戦争という一時的「非建設的」生産性に頼らない女性の社会進出を構想する、ということか。ブリテンへのオリーヴ・シュライナーの影響など、勉強になる。
岩瀬由佳「カリブの魔女と娘たち――逸脱者から救済者への表象変遷をたどって」。Herbert G. de Lisser, The White Witch of Rosehall (1929) については初耳。著者はアフロ・ユダヤ系ジャマイカ人で、完全にイギリス的価値観を内面化した新聞編集者で作家。この小説では帝国主義ゴシックといった感じで、魔女を「逸脱者」として描いているらしい。これがキンケイドの Annie John や、Erna Brodber, Jane and Louisa Will Soon Come Home (1980) になると、ヒロインを助ける魔女になる。どっちかといえば前者の話をもっと聞きたかった気も。
午後の特別シンポはごめんなさい、失礼して、大須「オッソ・ブラジル」で鶏を買う。