『ドラキュラ』からブンガク
『ドラキュラ』からブンガク―血、のみならず、口のすべて (慶應義塾大学教養研究センター選書)
- 作者: 武藤浩史
- 出版社/メーカー: 慶應義塾大学教養研究センター
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 単行本
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全体的には id:shintak さんが的確に評している http://d.hatena.ne.jp/shintak/20060429 のでそちらを見ていただけばよい。この本の性質としてあと付け加えるとしたら、方法論の混交性だろうか。丹治本が、新歴史主義的アプローチによって時代イデオロギーを焙り出す、というかたちでかなり一貫した端正さを帯びているのに対して、武藤さんは、現在文学批評に可能なあらゆるツールと、また文学批評という形式が帯びうるイデオロギー的意味を、自己規制せずに使いかつ引き受けるつもりでいる。その意味でこの本は、充実した読み物である以上に教室でのライヴに似ている。実際教えているときには、自分の研究上の方法論だけ純化して教えてりゃいいというものじゃないのだ。わたしは以前武藤さんの編著のさばきぶりを小野伸二に喩えたが、特定の得意技にこだわるよりもいろんなことを自分でやって局面を打開しようとするという意味で、小笠原というべきだったかもしれない。