米軍ヘリ墜落事件から

以文社K社長と会う。おもにJudith Butler, Precarious Life: The Powers of Mourning and Violence について。訳されていい本だとは思うが、竹村和子さんがCOE関連でなかなか身動きがとれないいま、一体誰が訳せるかははなはだ疑問。ゼミ、Dracula, chap.2、高山宏世紀末異貌』から「吸血鬼ドラキュラの世紀末」。高山宏を学部生に読ませるのは無理があり、もうちょっと事前の講義が必要だった。「メタ・フォークロア」という概念の説明とか。ウェブの検索機能を使うのがうまくない学生は、複数の検索語を入れるということに考えが及ばないのだと気づく。

一昨年8月の、米軍ヘリ墜落事件を追ったもの。黒こげになった壁を記憶の場として保存しようとする学内運動が大学当局に認められずに終わった経緯が、多数の証言はもちろん、討議資料や技術提案書によって語られている。現在が過去にならないうちに記録を残すことの重要性を、よく知っている人たちの成果だ。『沖縄タイムス』『マスコミ市民』、コンサート・パンフレットなど、かなりの部分が多様なメディアからの再録で、これをとりまとめた編者と担当編集者・岡本由希子さんの仕事ぶりには、叩首。わたしのように沖縄について無知な人間には、新崎盛暉による沖縄の現況分析の講演録もありがたい。