UFOとポストモダン

表参道を散歩。某学会の運営会議@渋谷。GARAで昔話。

UFOとポストモダン (平凡社新書)

UFOとポストモダン (平凡社新書)

小さい本だが、射程は大きい。大澤真幸なら「理想の時代」「虚構の時代」「不可能性の時代」と呼ぶものを、それぞれ「空飛ぶ円盤神話(科学信仰、先進科学を備えた人間型宇宙人)」「エイリアン神話(相対主義的科学観、隠れた巨大な陰謀のシナリオ、不気味な非人間型生物)」「ポストUFO神話(もうUFOが語られない時代、コンピュータ・バグの恐怖、単一の陰謀ではなく無数のテロへの怖れ)」に対応させている。円盤からエイリアンへの切断点をなす1973年のさまざまなできごとを連結させる部分がとくに楽しい(キャトル・ミューティレーション、多重人格「シビル」の症例発表、「刑事コロンボ」がサブリミナル効果をとりあげる、など)。アブダクション事件のさきがけともいうべき1961年のヒル夫妻の宇宙人遭遇において、夫が黒人、妻が白人であったことと、灰色で不気味なエイリアン・イメージが重なるという指摘も勉強になった。また、ところどころのデリダフーコーの解説部分は、思い切りよく単純化されていて小気味良いくらい。
たぶん本としての評価は、現代を扱った「ポストUFO」の部分をどう見るかで変わってくるだろう。前の部分に比べて色んなものを詰めこみすぎているし、そもそもUFOの話じゃないし。しかし短い枚数で、先行する時代と比較しての現代の不安の多層性は浮かび上がっている。こちら http://d.hatena.ne.jp/pilate/20060221 もご参考に。