EBMからNBMへ

雪景色を見ながら採点。

統合失調症の語りと傾聴―EBMからNBMへ

統合失調症の語りと傾聴―EBMからNBMへ

EBM は evidence based medicine、NBM は narrative based medicine を指す。統合失調症を慢性化させない成功例として、専門職などの限定された仕事や、家族の理解を得た専業主婦の例をあげたところを気分よく読んだ。細かいところでは、フロイトの「イルマの注射の夢」に出てくるトリメチラミンの化学式を、語りえないもの、ラカン的な〈現実的なもの〉とみなすところが面白かった。
ここから先はこっちの勝手な夢想だが、現在では、たとえばプロザックのようなポピュラーな薬名は、患者にとって、自分を生物学的・自然科学的な世界につなぎとめるもの、つまり語りうるものとしての〈現実界〉の役を引き受けることになるんじゃないだろうか。〈象徴界〉ではっきりと役目を与えられて合理化された〈現実界〉というべきか。心理という、自分でも直面したくないなんだかわからないものから逃れるために、病名とか、薬の名前が欲しくなる、という……。この本でも、最近は、自己診断した上で医者にきて、抗鬱剤をくれという、再帰的行動をとる患者が多いというし。