OED

非常勤先で試験監督。三鷹で鍼。

大英帝国の大事典作り (講談社選書メチエ)

大英帝国の大事典作り (講談社選書メチエ)

ブリタニカ、OED、DNBというイギリスの三大文献の歴史。タイトル以上にスケールの大きい文化史で、十八世紀イギリスの出版業――あまり教育のない層にも雑誌を提供しており、こうした啓蒙性が『サイクロピーディア』(1728)の背景にあった――や、グリム兄弟のドイツ語辞典など、話題も広い。ネタがネタなので、膨大な数の編纂者・出版業者が出てくるが、いずれも字数の割にキャラ立ちしていて楽しく読める。
ジョン・ウィリンスキー『ことばの帝国』(1994)のOED批判は未読だったので、勉強になった。女性や労働者階級はむろん、役人たち、十五世紀の大法官府官吏たちの仕事がOEDの用例では無視されている。この本全体としても、イギリス文化の評価軸が文学に偏りすぎだ、という指摘がされていて、なるほどと思う。いっぽう初版の閲読者には七六二人のうち二七八人の女性が含まれていたことも初めて知った。