バトラー

神戸の叔母が泊まりにくる。深大寺に初詣。妻が、大吉を引くまでいつまでも御神籤を引き続けるという荒業を繰り出す。

ジュディス・バトラー (シリーズ現代思想ガイドブック)

ジュディス・バトラー (シリーズ現代思想ガイドブック)

ジジェク』の後書きでも同じことを書いたが、ここでも、バトラーがなにをやって「いない」のか、がちゃんと書いてあって役に立つ。とくに最終章では、彼女への色々な批判がコンパクトにまとめられていてありがたい。
サリーも、竹村和子の後書きも、バトラーが「抽象的にすぎて政治的な現実から遠くなりがち」なことを気にかけている。わたしはじつは、バトラーに限らず理論一般について「現実から遊離している」という意識をもつことがあまりない。Undoing Gender を読んだばかりなのでますますそう思うのかもしれないが、理論はいつだって現実的であり、ある意味でわかりきった常識を述べてすらいることが多いと思っている。ただしその常識を、厳密に論理的に述べようとすると、少なくともそれで一貫した長い議論をしようとすると、日常言語ではうまくいかない。日常言語を用いる賢人は、断片的なスタイルで真理を述べることができるが、真理のことばをある程度持続させようとすれば、理論的言説が役に立つ。理論と経験的現実の関係とはそういうもので、バトラーでさえ、さして突飛なことを言っているわけではないし、少なくとも突飛さに彼女の偉さがあるわけではない、と思うのだけれど。