ご恵贈ありがとうございます。この
勉誠出版の「人と文学」シリーズを読むのは初めてだが、他のものもこのレベルなら、コンパクトでスタンダードな評伝として長く使われるはずだ。
カポーティはなにしろ
カポーティだし、母親をはじめ周りにもエキセントリックな人が多いので、悪意をこめたり風刺したりしようと思えばいくらでもできるはずだが、越智さんの視線は一貫して優しい。薬と酒に浸かって小説を書けなくなった晩年の
カポーティに対しても、だ。伝記のあるべき姿かも。細かいところでは、最初の安定した恋人だった批評家アーヴィン・
ニュートンの、自分の
セクシュアリティに対する怖れについて、また1966年11月28日プラザ・ホテルでの
カポーティ主催の大パーティ――彼のキャリアの絶頂であり転落の始まり――について、詳しく読めてよかった。不満は写真の少なさかな。付録は、「クリスマスの思い出」仕様の「フルーツケーキの作り方」。「日本人にとっては口が曲がるくらいに甘いが、
アメリカのおやつとしてはとても美味しい」というジャッジの心優しさが、この本の基調だと思います。