ニコルソン&ピクチャー・ポスト

イギリス文化史教科書プロジェクト研究会@三田。今日はイギリス外交史の大家を招いて話を聞く。勉強になることしきり。
発表のあとであれこれとっちらかった話になる。第二次大戦後の労働党政権で、ドルトンとかクリップスとかといった親ソ連派が外務大臣になる可能性がなかったわけではないが、実際にはベヴィンが外交を仕切った。労働組合運動から大臣に上りつめたベヴィンは、マルクスだのレーニンだのを読む理論派ではなかったし、そもそもイギリスの外交は「ソ連」ではなく「ロシア」が相手だと思っていた。四十年代から五十年代初めにかけてのイギリス労働党は、社会民主主義の勢いを最大限にしめした存在だったわけで、ソ連としてはむしろ(アメリカと比べて)近いがゆえに鬱陶しい存在だったのではないか、とか。あと、大戦間のイギリス・ファシズムは、結局モーズリーという坊ちゃん貴族を筆頭とする上からの運動であって、下からの力が弱かった。1923年にすでに労働党は政権をとるわけで、ドイツのファシズムを支えたような下層中産階級が、ファシズム以前に代表=表象されてしまっていたのが大きかったのではないか、とか。
Fさんの発表は、イギリス最初の写真誌、1938年刊の『ピクチャー・ポスト』を中心に。最盛期は1700万部!を誇ったこの雑誌を創刊したステファン・ローラントは亡命ハンガリー人。なんでハンガリーに優秀なカメラマンがあれほど出るのか、とか。この雑誌の特徴は、「見ている」庶民をとりこんだフォト・ストーリー。たんに見られる対象としての労働者階級の写真を載せるだけではなくて、見る主体としての労働者を提出したことに革新的な意味があると思う。
三田で酒。渋谷でカラオケ。ダイアナ・ロスを歌ったら女性陣にうけたのでよくわからないが鼻高々。久々に終電を逃して富士見が丘からタクシーに乗る。