サンドキングズ

非常勤先で講義、購読。職場に戻って年一回の接待タダ酒、非常勤講師懇親会@教員食堂。OO夫妻やIさんとイギリスのくだらないTVドラマの話とか。

サンドキングズ (ハヤカワ文庫SF)

サンドキングズ (ハヤカワ文庫SF)

初出は1976〜79年にかけて。七編どれもアイデア自体はそれほどではなく、ひたすら繰り出されるグロテスクな描写が持ち味。牧野修やクライヴ・パーカーの愛読者なら楽しめると思う。しかし人間観は描写の酸鼻さと比べると意外なくらいにヒューマン。ひたすら地下を這い回る虫どものうじゃうじゃ、ぬめぬめとした世界が展開する「蛆の館にて」でも、結末はとてもリベラル。表題作も、凄さはあくまで増殖していく虫どもの物理的迫力にあって、人間心理の不気味さとかはあまり出てこない。その意味ではむしろメロウな作家なのかも。厳冬の星の荒野に下りてきた宇宙船の生み出す夢の時間を語る「ビターブルーム」は、萩尾望都か晩年のティプトリーかといった少女趣味の一編。日本では少女マンガのかたちをとった、七〇年代のファンタジー趣味の一環として感慨深い。