Victorian Studies spring 2005

学会事務若干。卒論と院生論文数本。
Victorian Studies 47-3 (spring 2005)。Emily A. Haddad, "Digging to India: Modernity, Imperialism, and the Suez Canal"。1869年当時のエジプトのイメージ――近代と古代が共存するところ――と、スエズ運河のテクノロジーの近代的イメージが対比される。運河を作ったのはフランスでも、それが開く近代性は通商と航海を発展させるものだから、イギリス的だと喧伝された、とか。
Lawrence Poston, "Henry Wood, the 'Proms,' and National Identity in Music, 1895-1904"。1895年からロンドンのクイーンズ・ホールで始まった野外コンサートが、音楽の民主化に大きな役割をはたした、というのは以前から論じられているようだが、これは特にプログラムに注目。イギリスの作曲家をもっと入れるべき、という議論と、彼らはドイツやロシア(指揮者のウッドの妻はロシア人だった)の巨匠と比べてシリアスでない、優美だが軽い、といった議論があったとか。Frederic Hymen Cowen とか Alexander Campbell Mackenzie とか、知らない作曲家がいっぱい。これは紙より e-journal 化して、曲のさわりを聴かせてくれるといいなあ。音楽史の雑誌って、すでにそういうことはやってそうだがどうだろう。
Tony Ballantyne, "Religion, Difference, and the Limits of British Imperial History"。2002年以降に出た、近代大英帝国における宣教の歴史を扱った六冊の書評。この種のものはいつもそうだが、当該六冊の内容以上に、このテーマの研究史をコンパクトにまとめた最初の五、六ページが役に立つ。