女相続人

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『女相続人』The Hairess (1949 パラマウント)、『孔雀夫人』Dodsworth (1936 サミュエル・ゴールドウィン) と私的ワイラー祭り。前者はヘンリー・ジェイムズ、後者はシンクレア・ルイスの原作。後者はヨーロッパで生き恥さらすアメリカ人馬鹿妻の話で、これがコメディでもないのに商売として成立していること自体が感慨深い。『女相続人』のオリヴィア・デ・ハヴィランドは、不器用でおくてな箱入り娘を熱演。あまりに説得力がありすぎて、魅力がない。この役に魅力があったらドラマとしてウソなわけだが、そうしたウソを平気でついて魅力的な女優を映してこそ映画だと言いたくなる。ワイラー自身は役者より「ドラマ」を撮りたい人だったんだろうが、『この三人』とか『ローマの休日』とか、プロデューサーの意向が強くて彼が思い通りには撮れなかった映画、もっと通俗的な要素が強い映画のほうが、少なくともわたしには、逆により緊張感が感じられるのだ。