心理学の前史

英語、中間試験前の復習週なので、淡々と訳読・解説をやり、その退屈な授業の退屈さを学生も承知してノートをとる。いつも試験前は「勉強とは何か」とか「面白い授業とは何か」とかを考えてしまう。会議。中間試験のMDとDVDの準備。
身体医文化研究会@日吉。Ferdinando Vidal, "Is there a 'prehistory' of psychology?"。「心理学には長い過去があるが、歴史は短い」というエビンガウスのことばは、無数の心理学史の教科書で引用されている。しかし十八世紀フランスにはすでに psychology ということばがあったし、コンディヤックの感覚をもつ彫像論などはその文脈から出ている。近代心理学はヴントから、ドイツでの制度化から始まるということにたいがいなっているわけだが、それ以前にどういうものがあったか、という話になると、心理学史家はたいがい、自分の心理学の概念に当てはまるものを十八世紀以前の哲学や医学や文学から勝手に拾ってきて並べあげることになる。現在の心理学はあまりに多様で、なにが心理学なのか誰も決定的なことなど言えないのに。
日吉西口のビニールシートがけのオレンジ色バーでギネスなど。いまベルリンのマックス・プラント研究所にいるヴィダル氏がアルゼンチン生まれであることを知る。スペイン語母語の人がドイツに住んでフランス語で本を書いて英語で教えているわけだ。初来日一週間にして、"Which beer is the most "wa"(和)?" などと聞いてくる。日本での精神分析の地位はどんなものだ、と問われて腕組み。