Nature, red in tooth and claw

非常勤先で講義、購読。舌がもつれる。『ディケンズ鑑賞大事典』担当章の索引作り、えんえんと終わりません。
わたしの入ってるメーリングリストのなかでトラフィック量最大を誇るインディアナ大学の Victoria ML で、テニスンの「イン・メモリアム」(1850)とインテリジェント・デザイン論というネタで盛り上がっている。かなりの英文教授陣が、この詩を教えるついでにインテリジェント・デザイン論のあれこれを自分の学生から聞きだして、楽しいのが半分、気分暗澹が半分、という感じらしい。「イン・メモリアム」自体は『種の起源』の七年前に出版されていて、そこで論じられている進化論的発想はダーウィンのほどラディカルではないのだが、それでも進化論的発想を自然神学の目的論的思想と一致させるという、いまならID穏健派が取り組むような問いと格闘している。チャールズ・キングズレーとか、進化論とキリスト教自然神学は矛盾しないと考えたヴィクトリア朝人は多かったわけで、ID論者がそうした論調の文献選集でも出してくれないかね。
いまや極右の本場となり、Flying Spaghetti Monster 教の布教の地となったカンザスで教えている人からも、えらく教室が盛り上がったという投稿がある。今年の購読の教科書 What's The Matter With Kansas?: How Conservatives Won The Heart Of America によると、カンザスは1990年頃までは共和党穏健派の票田で、それがいまや共和党内部が完全に分裂して、保守派と穏健派で同じ日にべつな集会やったりしてるらしい。そのウルトラ保守を束ねるカンザス上院議員サム・ブラウンバックは、次の大統領選予備選に出るつもりでいるらしいが、彼のもっとも尊敬する政治家といえば、ヴィクトリア朝の奴隷廃止論者ウィリアム・ウィルバーフォースらしい。なんかこういうところで「ヴィクトリア朝復権」なのかと思うと、妙な気分になるが、宗教と政治の関係を論ずるには歴史に学べ、というかたちでヴィクトリア朝に目が向くのは、いちおう歓迎すべき事態……ではないよな、やはり。