人斬り唐獅子

授業の準備に、仁侠映画についてウェブで調べようとして、情報が少ないのに驚く。それぞれの映画の人物の設定、とくに『日本侠客伝』シリーズで健さんと鶴田さんがそれぞれどんなキャラクターをふられているか、を簡単に確かめたかったのだが、これがわからない。allcinema online でも、60年代の東映映画にはほとんど解説もコメントもない。そりゃまあ、仁侠映画のストーリーなんて一々書いてもたいがいの人には細かい違いは意味がないといえばそうなんですが。健さんにはさすがにファンのサイトがあり、http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Studio/5155/index.html で主役の設定はある程度わかるが、脇役についてまではわからない。鶴田さんにいたってはファン・サイトもない。鶴田さんのほうが演じる役柄の幅が広い(だから共演している映画では、健さんがどう対比されているかが気になる)から、情報がないとイメージが明確にならないのだが……。任侠映画のファン層と、インターネット・へヴィーユーザーの層がまったく違っているということか。仁侠映画には、ワンパターンのなかの細かな違いを議論しあうようなオタクのコミュニティがないということかな。わたしの好きな高倉健出演映画というと、『網走番外地・望郷編』と『人生劇場・飛車角と吉良常』だが、これって、高倉健という俳優自体はべつに好きではないと言ってるのと同じだ。せっかくだから、この機会に『残侠伝』シリーズは少し固めて観てみるか。

映画の論理―新しい映画史のために

映画の論理―新しい映画史のために

それでも健さんの映画はDVDが出てるだけましだ。(『日本侠客伝』はあまり出てないみたいだが。)ニコラス・レイとなると、わたしが観たことがあるポピュラーな五本以外は、アメリカ版でも出ていない。しかも加藤さんによれば、その五本のうち論ずるに足る映画は二本半くらいらしいのだ。すぐには手に入らないすばらしいソフトについてこうして歌い上げ、嫉妬の炎をめらめらと燃え上がらせる加藤幹郎は、まこと優れたプロモーターである。ふつふつと憎悪の念がわく。