合掌 良いものをより安く

中道通りの Giovanni という銅版画と輸入文具の店で、シールワックスを衝動買いしそうになり、なんとか思いとどまる。
Stephen Spender, Forward from Liberalism (Victor Gollancz 1937). オレンジ一色の装丁も鮮やかなレフトブック・クラブ・エディション。当時の大ベストセラーだが、いまはアマゾンでまったくヒットしない。理由は一目瞭然、あまりにおなじみのことばでできた本だからだ。これを読むと、リベラル左派の言説というのが、いかに半世紀以上変わっていないかがよくわかる。政党政治は真の選択肢ではないとか、自由と民主主義への信頼とか、頁をめくっていっても、なんというか本を読んでいるのかなにか目の前の本ではないことを思い出しているのか、区別がつかない。
スペンダーの散文は、いま読んでも全然面白くない。(詩はまたべつて、A Heven-Printed World とか、気恥ずかしいところはあるけど、けっこう読める。詩の場合、真面目すぎることが裏目には出ないから、またこの種の詩がいまではほぼ絶滅しているからだと思う。似たものを探すとなるとディランとかになる。)じゃあなんで読むのかといえば、その面白くなさが時代をよく教えてくれるから、だろうか。この本では、イギリス労働党の腰抜けぶりを批判する最終章が、当時の政況を教えてくれて興味深い。正直にいえば、才能とルックスの違いをとりあえず度外視すると、基本的な政治姿勢、セクシュアリティ、すぐ流行についていく軽薄さ、年長の大家にすり寄る功名心、ユーモアのセンスの弱さ、文学と政治をどこかで一致させる言説をもつべきではないかと考えてしまうまちがった生真面目さ、等々、スペンダーは、わたしの目から見たわたし自身とはなはだよく似ている。この時代にこの状況におかれていたら、自分もこんな感じで書こうとしたのじゃないかと思う。だからスペンダーの目から見ることで、1930年代がより生き生きと感じられる。

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購入。ブラー meets スペシャルズ、って、タワーもうまい売り込み書くなあ。"Cash Machine" 貧乏臭くてよい。