人的資本論
都税事務所の固定資産評価係のお相手。
- 作者: 稲葉振一郎
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/09/06
- メディア: 新書
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福祉やセーフティ・ネットの議論ではたいがい、最低生活水準というやつが問題になる。避難民救済などでもそうだ。まず水、食料、トイレ……。しかしそれって、自分ではなにもできない人間に「むき出しの生」のレベルで生きることを保証する、だけではないのか。現代では、肉体的な条件のためにいっさい労働できない人間など、ほとんど考えられないのに。コプチェクなどもずっと、この種の身体の安寧論にかわる倫理を見いだそうとしているようにみえる(うまくいってるかどうかはともかく)。あらゆる無産の庶民を「身体の資本家」として社会に参入させる稲葉の議論は、十分に実践的だと思う。
エピローグはロボット&サイボーグ論。人的資本の場合、資本の所有者と資本が一致しているところが他の財と違うわけだが、じゃあ機械=所有される資本が、身体と混ざり合ったらどうなるか……。もちろん、思弁として、読み物としては、ここがいちばん面白い。また機会があったら丁寧に読もうっと。