マザー・ハバードきちんとおじぎ、犬もおなじくきちんとおじぎ
昼から両親が鰻を奢ってくれる。胃もたれ。
- 作者: 鶴見良次
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2005/08/27
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
今回初めて知って面白かったのは、第六章で取り上げられる、コヴェント・ガーデン劇場の「オールド・プライス騒動」。1809年秋に二ヶ月以上続いた、観劇料の値上げに反対する観客の騒擾だ。このとき「ポリー、やかんをのっけてよ」や「これはジャックの建てた家」の替え歌が、劇場を非難する観客によって合唱されたのだという。特筆すべきは、この運動が下層階級によるものではなく、劇場の常連だった中流ないし専門職階層のものだったことだ。伝承童謡は、こうした層にとって政治的な抵抗のためのメディアになっていたわけだ。無反省に「民衆」ということばを使ってはあかん、ということですね。第七章でも、植民地砂糖の不買運動という中産階級的な運動に、児童書がはたした役割が論じられている。児童書のもつ野蛮さや暴力性を強調しながら、それに魅せられて言祝ぐのでは全然なくて、そうした要素がいかにコントロールされて政治的な意味を担わされているか、を論じるというスタンスが、すごく冷静です。