山田太郎と申します

中央大学図書館へ。杓子定規な対応に殺意を感ずる。久しぶりにバスで多摩センターへ。モノレールは、乗るより下から見上げるほうが楽しい。多摩センターの地上は、気味悪いくらい子連れと熟年しかいない。駅ビルには若いやつもいるが、センター市街の空間は、まあまともな神経をもった高校生から二十代を排除するだろうと思う。

山田太郎と申します

山田太郎と申します

吉祥寺に住む坊主頭でそこそこマッチョのこてこて関西弁男、山田太郎を、狂言回しというか反響版にした女たちの連作短編集。この男、いちおう性的魅力はあるんだが、なにしろ女よりデイヴィッド・アッテンボローとサバクネズミのほうにぐっとくるらしく、まともに彼女らの相手をしない。ことごとく女たちの調子を狂わせ、苛立たせ、ときに素直に反省させ、ときに激昂させ、それぞれのキャラクターを浮き彫りにする。要するに、女を描くための異人譚(吉祥寺で「はあ、しんど。長い人生いろいろあるで、ほな、さいなら」なんてことばを発する奴、異人に決まってる)である。玄月の書く女は、女が読むと「こんなんありえへん」と腹が立つのかもしれないが、自意識のあまりない若くてもてる女と、二話目の「虎の習性」で出てくる自意識過剰の警戒心の強い女が、どちらも似たようなリズムで書かれているのがおかしい。明らかに男性作家の書く女性像だと思うのだが、それを書くのに山田太郎という、女性の性的幻想を失調させる存在をもってくるのがうまいなあ。