East Lynne

カラオケ。フジファブリック固め歌い。ポルノグラフィティとかユニコーンとかと同じ「歌えるけどなんか違う」カテゴリーかなと思ったが、しつこく歌っているうちにある程度なじむ。

East Lynne: Literary Texts Series (Broadview Literary Texts)

East Lynne: Literary Texts Series (Broadview Literary Texts)

East Lynne (Oxford World's Classics)

East Lynne (Oxford World's Classics)

原著は1861年。重婚ものセンセーション小説の代表作の一つ。急いで読んだこともあって、解説に書いてある以上のことは思いつかない。階級移動の小説として面白いのはわかる。主人公 Isabel Vane は Mount Severn 伯爵家の一人娘。しかし父親の放蕩のせいで財産はろくに残ってない。East Lynne の領地も、じつはミドルクラスの若い弁護士 Archibald Carlyle に買われてしまっている。父の死後、熱烈な求愛をうけて Archibald の妻に。夫は立派な人だし尊敬しているが、熱い愛は感じない。そのうち夫の幼馴染である隣家の Barbara Hare と夫の仲が怪しいのではないかとあらぬ疑いをかけだすうちに、どら貴族の Fracis Levinson に誘惑されて駆け落ち。しかしフランスで捨てられた上に、列車事故にあって容姿も一変。本来の自分は死んだことにして、不器量な家庭教師として暮らしているうちに、どうしても自分の二人の子どもに会いたくなる。緑色の眼鏡をかけ、みっともないなりをしてかつての自分の屋敷を訪れると、夫は Barbara と再婚していた……。
前半では Barbara が、後半では Isabel がそれぞれ嫉妬に身を焦がす、という対称性がドラマを作っている。キャラとしては、サブプロットの殺人ネタで狂言回し的に動く Hare 家の美人女中 Afy Hallijohn が面白い。男前の貴族やミドルクラスにすぐなびいては、結婚できると勝手に勘違いして鼻たかだかというバカ女で、文体的には異様に平坦なこの小説のなかではいちばんスラングを使う。それから、Isabel の従兄にあたる次の代の Mount Severn 伯は、コーラス役というか、Isabel の駆け落ちを非難しつつ彼女を財政的に援助する常識人として、おもしの役を与えられている。地方選挙のようすもちょっとだけあり。全体としては、ミドルクラスが金の力で領主になれるようになった、また1857年の Matrimonial Act によって、浮気した妻を正当に離婚できるようになった、といった時代背景との関連で読んだほうが面白い。作中の Archibald Carlyle は、前妻が死んだと聞くまでは再婚しないとはいえ。 うーん、コリンズとかチャールズ・リードとか、細々と法律の細部を書き込むような小説のほうがわたしの好みには合ってるか。