杏仁ジュース

Fran Fran とか無印とか。
なじみの中華料理屋の大将と話す。今度娘さん夫婦の買ったマンションに引っ越すという。中国には百坪超の土地があるが、もう日本にきて二十年、娘さんは人生の大部分を日本で過ごしているわけで、結婚相手も日本人、中国に住むつもりなんか全然ない。「駅から遠いのは嫌だし、中国のほうが安く暮らせて広いんだけど、でも子どもがね、大事だから、やっぱり」。なんの気なしに「娘さん、中国系といったって、もうまるきり日本人ですよね」と応じたら、「いや、わたしも全部日本人だから」と聞き取りにくい日本語で返される。ああそうか、大将は、いわゆる残留孤児なのである。それに気づくと、聞き取りづらいが能弁な日本語を喋る大将と、注文以外の日本語を一切解さない奥さんの対比が、ちょっと重い意味をもってくる。長年店を繁盛させているのだし、成功者といっていいだろう。「日本、いい人ばかり。でも広告されないから、中国の人はわかってない」といいつつ、中国を忘れているわけではない。いや、忘れてないから商売がうまくいってるのだし。帰国した孤児の方たちはみな、こんなに安定した生活を送っているのだろうか。