ホーンビー

CALL英語、会議、会議、会議、会議。

The Polysyllabic Spree: A Hilarious and True Account of One Man's Struggle with the Monthly Tide of the Books He's Bought and the Books He's Been Meaning to Read

The Polysyllabic Spree: A Hilarious and True Account of One Man's Struggle with the Monthly Tide of the Books He's Bought and the Books He's Been Meaning to Read

サンフランシスコの文芸誌、Believer に連載された「今月買った本」と「今月読んだ本」のリストつきエッセイ。この雑誌、一昨年の創刊らしいが、知らなかった不明をおわびします。ポリフォニックならぬポリシラビック・スプリーとは、塔に住まって日夜古典に読みふけり、文学の伝道師として邁進するこの雑誌の数十人の白装束の編集員たち、なのだそうだ。

こんなブログをやっていると、読んだ本と買った本の違いには敏感になる。ホーンビーはあいかわらずのほどよい自意識で、三男の誕生やサッカー・シーズンの始まりが、いかに読書量に影響を与えるかを語っていく。芸に昇華された率直さ。アラン・ホリングハーストのブッカー章受賞作 The Line of Beauty など、買ったきり読まれていない。いや、翌月の「読み終わらなかった小説」という、本のタイトルを伏せた項では、「気の利いた細部のきらめきや美しさは、派手なスペクタクルやストーリーテリングに埋め込まれていたほうが、そうでないよりずっといい」という視点から、スピルバーグ映画が賞賛されている。これって……。じつはわたしも、ホリングハーストは現代イギリスきってのスタイリストだと思うが、 The Line of Beauty は半分読んで放り出している。べつに悪口じゃないよ。プルーストだって、七巻すべてどこかは読んで、場所によってはなんども読み返しているのに、一巻たりとも最初から最後まで読んではいないのだ。しかしこういう読み方は、「読んだから書く」ときにはどう処理すればいいのか。

今回初読!という『デイヴィッド・コパーフィールド』への賛歌は嬉しい。最後はパトリック・ハミルトンと、チェーホフの書簡集。まったく口語的でいながら、じつに明晰に理屈っぽい(なんというか、ほとんどあらゆる批評的発言が、この文体を崩さずに可能なようにみえる)というホーンビーのスタイルは、この二人にそっくりだ。久しぶりにチェーホフを読みたくなる。