イバニエスの激流

非常勤先で特殊講義、英文購読。しどろもどろ。

妻が神宮前のトルコ料理店「ハレム」を取材し、大量のお土産をもちかえってくる。茄子ペースト、ケバブ、ピスタチオライス他貪り食う。

LD、The Torrent 『イバニエスの激流』(MGM1926、モンタ・ベル)。イバニエスって、地名でなく原作者だったのね。ガルボのハリウッド第一作で、スペクタクルあり笑いあり(サイレントだけど)歌あり。カルメン役のプリマドンナとして世界的カリスマになるスペインの田舎娘にガルボ、お相手の二枚目らしい二枚目にリカルド・コルテス。中盤の山となる川の氾濫シーンのミニチュア合成はすごい迫力だが、笑えることにガルボにはなんの沙汰もない。コルテスが濁流を乗り切って必死に助けに向かってみると、ガルボは真っ白いドレスでベッドに艶然と横になり、「わたしの家が潰れるはずないでしょ? なにしにきたの?」とのたもうのだ。しかもこのあと「乾いた服に着替えなきゃね」といわれたコルテスは、毛皮つきの女物コートを着せられるという恥辱プレーに。

ガルボを諦め地元の名士の道を選んだコルテスは、良妻と子どもと国会議員の地位を得る。しかし最後信じられないくらい老けた顔でガルボの楽屋を訪れる彼は、"I have everything... but love."といって、年がいもなく抱きついてくる。見た目まったく老けない(良き時代であったことよ)ガルボは、彼を邪険に突き放す。舞台を終えて、固い表情で独り車に乗り込む彼女に対し、スターのオーラにあてられた聴衆が "She must be happy. She has everything." というところでエンド。愛はすべてであり、とともになんの世間的な幸福とも無縁であるというガルボのイメージは、これ一作で完全にできあがっている。