リベスキンド

ラショナリスト建築家YOAAさん http://d.hatena.ne.jp/yoaa/ と現場で内装、作りつけ家具の打ち合わせ。

Breaking Ground

Breaking Ground

Daniel Libeskind: Jewish Museum Berlin (Architecture S.)

Daniel Libeskind: Jewish Museum Berlin (Architecture S.)

Daniel Libeskind, Breaking Ground (Riverhead 2004)。やっぱりポピュリストを自認してるんだな。成功した移民の回想録として、じつにアメリカ的かつベタに感動的。ヴィニョリ事務所のNY生まれのスタッフにはよそ者呼ばわりされ(ヴィニョリだって外国人なのに)、マンチェスターの労働者階級生まれのノーマン・フォスターには、マンチェスターに戦争記念博物館を建てたことに嫌味を言われた、とむしろ楽しげに語る。自分こそ大衆的な集合記憶の担い手であるという自信があるんだろう。全体にリラックスしたトーンだが、ニューヨークタイムズの建築批評家ハーバート・ミュシャンへの敵意は相当なもの。建築に対して醜いとか非実際的というのはかまわないが、「キッチュ」と言ってはけっしていけないそうです。
この本でいちばん好きなのは、JFKの税関職員に「あんたの顔、知ってるよ。どれだっけ? キスするやつか、五目並べか、骸骨か、丸いのか?」と聞かれるところ。リベスキンドのグラウンドゼロ・プランをこのノリで呼ぶなら「丸いの」じゃなくって、「でっかい壁」とか「ナイフのタワー」じゃないかと思うが、本人はこう言われてとても嬉しかったという。ニューヨークというグリッドの街に円環形をもちこむのが狙い(逆にアイゼンマンたちの「五目並べ」はグリッドを強調している)で、それをどの建築批評家よりも一人の空港職員がわかってくれた、と。彼とミュシャンを分つのは、自由の女神像にすなおに感動する「一般大衆」の側につくかつかないかなのだ。