ロフティング

e-learningオリエンテーション、会議。
Gary D. Schmidt, Hugh Lofting (Twayne 1992)。トウェインの作家叢書の一冊で、ロフティングの総論は単著ではこれくらいのようだ。だんだんわかってきたが、ドリトル先生シリーズは、児童文学史ではメジャーな正典に微妙になりきれない位置にある。『プー』や『たのしい川辺』のほうが文学として上だと言われればまあそうだが、不思議なことにそうしてロフティングを一流半と位置づける人たちのほとんどは、『アフリカ行き』The Story of Doctor Dolittle をおもに取り上げる。記念すべき第一作ではあっても、これはシリーズ中いちばんつまらない、といって悪ければもっとも子どもっぽい作品だ。二作目にして最高傑作『航海記』The Voyages of Doctor Dolittle と比べると、その描写の密度の違いは衝撃的ですらある。トミー・スタビンズという語り手の存在は大きく、シュミットの本はその比較を丁寧にやっているが、なぜこんな違いが、という問いに答えるのは難しい。第一作のこれみよがしなお伽話のモード――なにしろドリトル先生は、アフリカに行く金を作るのに、ただ「船乗りに頼んだ」だけなのだ――のほうがむしろ例外的で、『アフリカ行き』が代表的なドリトルものとして語られるのは、不幸なことかもしれない。
ちなみにシュミットは、『郵便局』以降、『月からの使い』までの作品は、構成的にルースでできが悪いと断言しているが、このシリーズのファンは、一貫した筋がないことなんて気にしてないと思う。『航海記』と『秘密の湖』が代表作であるのには賛成するけど、『動物園』や『サーカス』をそこまで貶めなくっても。