Tom Thumb the Great

18世紀演劇読書会@成蹊。Henry Fielding, The Author's Farce (1730), The Tragedy of Tragedies; or the Life and Death of Tom Thumb the Great (1731)。どちらも大変くだらない。
前者はバーレスクのくせに三幕ある。三文文士と下宿屋の娘とのロマンスが入る都会喜劇だが、三幕が人形劇でやたら長い。しかも最後は外枠のキャラであるはずの三文文士が人形劇のなかに乱入してきて、「ぼくじつはなんちゃら国の王子だったんだ、ぴょん」、下宿屋のおかみも「じつはあたしほにゃらら国の女王なの、ぴょん」とかいってそのままわーっと終わる。めちゃくちゃ。
後者はアーサー王伝説親指トムを混ぜた添え物のドタバタ。ジョナサン・スウィフトは生涯で二度しか笑わなかったが、そのうち一回がこれを観たときだそうな。親指トムが国を救って巨人と戦ってモテモテとかで、十九世紀までは(たぶん卑猥な部分をカットして)家庭内でもよく上演されたらしい。親指トムはしばしば子どもや女性が演じたらしい(わたしはてっきりパペットが演じていたのかと思ったよ)。劇そのものより初版に著者自らつけた140もの注釈が圧巻。最初の "Such a Day as this was never seen" というところにいきなり「コルネイユのいう三一致の法則が……」とか、延々と注がつく。ただ dayということばが出ただけなのに。その後もひたすら無駄な教養を繰り出して、いかにこの作品が偉大な悲劇であるかを説き続ける。あほか。こんなものを二十歳そこそこで書くフィールディングもすごいが、読んでいると、スターンなどの「メタフィクション」はこうしてヴァラエティ・ショー的なアホ芝居ののりから出てきたんじゃないかという気が強くする。