いいなづけ

試験監督、試験監督、試験監督、採点。合間に妻が「保険証が見つからない! どこやったの! 腹痛で死ぬ!」と泣き叫ぶので、いったん家に帰って保険証を探し、しばらくして妻がこの1年間なんの保険にも入ってないという事実に気づく。

原著1827。長年の懸案本、文庫化されたので読みました。舞台はスペイン占領下の17世紀ロンバルディア。飢饉下でのミラノの暴動シーン――パン屋が襲撃されて、そこらじゅうに貴重なはずのパンがばらまかれいてる――がとりわけすてき。主人公は職人だし、民衆の集合的エネルギーをを打ち出す場面も多いが、事態の解決は高僧たちの個人的人徳に頼ってるのが面白い。カプチン修道会のクリストーフォロ神父とか、ミラノ大司教とかは、敵であってもその前に出ると恐れ入ってしまうだけの人格的力があって、流れを変えてしまうのだ。それもあって「歴史意識」はむしろ希薄な感じがする。民衆小説ではあるが、思ったほどイタリア統一とか、国民国家形成へのヴェクトルがなくて、時代の変転を捉えているという感じではない。下巻のほとんどを占めるペストも、強者と弱者に平等にふりかかる災厄として、宗教的に、こういってよければ無歴史的に描かれているような気がする。
平川先生の文庫版あとがきは、全然この作品の話をせずに外国文学研究の現状と展望について説教し放題。いえ、わたしももう少し英語以外の外国語を勉強しようと思いました、はい。