ハムレット

非常勤先で試験監督。採点。おおむねよくできていて、けっこうなことだが、成績がつけづらい。真面目な話、雑な授業してるときのほうが上下の差がはっきり出て成績はつけやすいという……

ハムレット (シリーズもっと知りたい名作の世界)

ハムレット (シリーズもっと知りたい名作の世界)

ご恵贈頂いてから数ヶ月、やっと読みました。ありがとうございます。このミネルヴァの「もっと知りたい名作の世界」シリーズに目を通すのは初めて。値段といい絵本風の装丁といい200ページない厚さといい、完全に学部生用教科書の雰囲気で、実際基本的な情報や読み方もいろいろ提示されてるんだが、中味はみかけよりハードコア。とくに第二部の歴史的研究三本は、充実。蒲池美鶴は宇宙論ハムレットがオフィーリアに送った四行詩に、「星はエーテルだ」とする古い宇宙観が、「星は火だ」という新しい宇宙観に疑念を抱いているさまを読みとっている。当時の習字教育に、『ハムレット』の文字を書くシーンを重ね合わせる小澤博の章は、習字教則本からの多数の手とペンのイラストも楽しい。井出新は、第一四つ折り版(1603)と第二四つ折り版(1604)の成立過程を推測。第一版(二版とマーセラスやヴォルティマンドの台詞がほぼ同じだが、他が相当違う)は、マーセラス役が他の劇団に移籍して、地方で『ハムレット』を上演するために記憶で再構成した台本だったのではないか、という推理が大胆に語られている。本来の上演権をもってロンドン中心に活動する宮内大臣一座と、地方巡業を主にし、テクストを改変していく旅芸人一座との力関係が浮かび上がってくる。本文研究がこんなにスリリングになるなんて、という感じ。