フィリピンの対抗的政治社会運動批判

CALL英語。特殊講義、メスメリズム。

パリのメスマー―大革命と動物磁気催眠術

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ウィーンから来た魔術師―精神医学の先駆者メスマーの生涯 (ヒーリング・ライブラリー)

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Mesmerized: Powers of Mind in Victorian Britain

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にしても暑い。
クォータリー あっと 4号

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特集「フィリピンの『対抗的政治社会運動』批判」。この夏は助成金プロジェクトからマニラのワークショップに行く人も出るので、こちらとしてはありがたいタイミングで出た本。オルター・トレード・ジャパン本体が、NGO日本ネグロス・キャンペーン委員会と一体であることすら今気づいた無知な読者にも、すごく親切にフィリピン社会の問題点を教えてくれる。ネグロス島という「地方」のすごくミクロな問題点を通しているがゆえに、わかることが多い。逆に大枠については、内田晴子論文が、「弱い政府」の国家において、軍が事実上の政府機関として、またエリート養成機関として機能している(多くの士官はマネジメント系の修士号をもつ)ことを教えてくれる。
ことに、80年代に共産党下の新人民軍で教育係としてネグロスで活動し、現在では離党して故郷の村の村長になっているフレッド・ボディオスの談話は、島の武装闘争の実態を詳細に語って圧巻。農民たちは封建主義やファシズムは(地主や仲買人や軍は具体的に知ってるわけだから)理解してくれたが、「帝国主義」は難しかったという。86年にマニラでエドサ革命が起こると、党は混乱に陥るが、やがてアキノ体制打倒の姿勢をはっきりさせる。ただここでボディオスは、ゲリラ戦中心の非合法活動の問題点を意識し始めている。とくに都市部のNGOとの連帯ができない。合法NGOを通して配給された水牛を受けとるための合法組織が地方の人民軍側にないので、全部政府軍に未登録として没収されてしまう。党の中央組織は地方をよく理解してもいない。90年に軍組織が鎮圧され、その後党が合法化に向かい始めても、地方農民との組織作りの方向は感じられなかったという。汚職まみれの前村長との選挙に勝ったいま「村長の仕事と以前の南部の解放区の仕事は、『革命的』という名称を外せばほとんど変わらない。協同組合の会議もシャブの取り締まりも村民の揉め事調停もアプローチは同じ」だそうです。