ディケンズ・フェローシップ@山口

ディケンズフェローシップ日本支部春季例会@山口大学。寺内孝「ディケンズはキャサリンと和解できたか?」。伝記研究、ディケンズが晩年に住んだ Gad's Hill の改築を執拗にくりかえした話が面白かった。栂正行「ディケンズの家、モームの家」。この二人にとどまらずスウィフトやナイポールに触れて、家に住人の内面が投影されて家の描写が性格描写でもあるようなケースと、それとは違って家があまりキャラクターの説明になっていないケースを対比する。後者のほうが人物造型として面白い、という路線は、Nancy Armstrong, Fiction in the Age of Photography: The Legacy of British Realism と重なるように思う。アームストロングは、ヴィジュアルな描写がキャラクターを「描きつくす」ステレオタイプ的造型と、内面性なのかなんなのか、とにかくキャラが視覚情報を越える場合を対比しているからだ。写真はもちろん視覚情報だが、既存の解釈枠にはまった意味を伝えるとは限らず、ただ人物が写っているだけのものともなりうる点で、後者の典型例とも言えるのだ。Tony Williams は、鉄道、速記、アメリカ社会など、ディケンズ作品の「速度」のモチーフ。目新しい話ではないが、歯切れのいい英語で、朗読部分が耳に心地よい。
懇親会@ホテルニュータナカ。ドレッシングをかけ忘れたのではないかとすら思われるカルパッチョ――しかし素材が良いのでこれはこれでうまい――などとワイン。Williams 氏は現在フェローシップ・ロンドン本部の事務局長 honorary general secretary なのだが、honorary がついているということは無給なのかどうか、誰も尋ねる勇気がない。さらに二次会、三次会。ディケンズフェローシップはなじみの顔ばかりでリラックスしているということなのでしょうか、どうも飲みすぎる。イギリス研究者の集会だが、パラグアイ戦の結果を気にしているのはわたしくらいだ。