ショック映画昭和四一年七月号

妻が神田ぱんさんから、昭和四一年プレイグラフ社刊の『ショック映画』七月号を借りてくる。知らない雑誌だが、ショック映画というのは要するにエロ。でも誌面はけっこう読み出がある。「特集・銀幕の歌声」で、来日直前のビートルズの特集が組まれていて、浅利慶太とかの「あれはただの雑音だね」なんていう談話が出ている。読み物としておもしろいのは、佐藤重臣と、佐藤泉という音楽評論家による「歌う映画スター採点」。倍賞千恵子は「いまみたいな冷感症ではレコード歌手として行き詰る」とか、言いたい放題。
後ろのほうには写真入りできわどい映画が色々紹介されている。「ブラジル芸術映画・禁じられた情事」とか「特集・スクリーンを飾るセクソロジイ」とか。1966年の時点でも、エロは芸術とか性科学とかなのるという伝統が生きてるらしい。後者で取り上げられてるのは『太陽が目にしみる』と『恍惚』。前者はスペイン映画。後者は西独製作で、イングリッド・チューリンが同性愛者のギリシア大使の妻で、夫に放っておかれて男漁りに狂う、というもので、ちょっと観てみたい。長々書いたけど、この頃から七十年代にかけては、この種のヨーロッパ映画はハリウッドが与えてくれないエロをちゃんと見せてくれる――といっても大したものではないが――娯楽として、市場をもっていたわけだ。そういやわたしがスクリーンで最初にヌードを見たのは、ごたぶんにもれず『青い体験』(1973)で、しかも母親といっしょに観ていたという、べつに思い出したくないことを思い出した。
TV『豚と軍艦』。あらためて名作です。吉村実子のせせこましい家のなかをぶんぶん振り回すようにカメラが動く長回しや、丘の斜面をぽんと飛び降りる長門裕之を上から撮ったショットとか、活劇の面白さが満載。豚走るし。加藤武齧られるし。豚映画として、もっと上位にランクすべきだったか。