岡本にて

ディケンズ・フェロウシップ日本支部総会@甲南。役員改選で理事というものになる。もしかすると、今回さぼって出席しなければこれは免れたのかな。だとしたら家で原稿書いてたほうがよかったかも。
吉田朱美「 The Mystery of Edwin Drood における倦怠感」。おもに John Jasper の性質の二面性について。もうちょっと音楽の話が出ると思ったんだけど。吉田一穂「Great Expectations と self-help のコンテクスト」。M大先生が、スマイルズだけでなくカーライルを考慮に入れたほうがよいのでは、と助言していた。
金山亮太「左側に転覆する列車――ディケンズ脳梗塞」。晩年のディケンズは左半身の不調に悩んでいたのだが、実際は「右側」に転覆した1865年の列車事故の記憶をそれと結びつける一席。ディケンズはその後しばらく列車に乗るたびに、現実とは違って「左側」に――つまり自分の麻痺した身体の側に――列車が転覆するのではないか、という感覚を持っていた、というのが面白い。
マイケル・スレイター大先生の講演は "Dickens's Lives"。フォースターからピーター・アクロイドやクレア・トマリンにいたるまで、さまざまの伝記作家たちがディケンズをどうみてきたか。1930年代、Daily Mail 紙は新たに発見されたディケンズの子ども向きのキリスト伝を連載し、Daily Express はまったく同時期に彼と愛人エレン・ターナンの関係をすっぱ抜いていた、というのには笑った。おまけの朗読は Our Mutual Friend から、ポドスナップがフランス人相手にもったいぶったイギリス自慢をして、相手の英語を直したりするところ。名人芸を堪能する。今日退任された西條前支部長へのはなむけ、ということだったが、それによりによってこのシーンかい。
西條支部長最後のお仕事となった懇親会は、大学の学食に外から中華の仕出しをとるという荒業。うまい。学部に地元の商工会とつながりのある方がいるらしく、ワインもかなりいいものが並ぶ。酔う。