Down There on a Visit
- 作者: Christopher Isherwood,Isherwood Christopher
- 出版社/メーカー: Univ of Minnesota Pr
- 発売日: 1999/02/01
- メディア: ペーパーバック
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第一部の "Mr Lancaster" は、『山師』Mr Norris Changes Trains にすごく似た、なんだか怪しいきどった年長の知人を描くもの。これまたゲイ・フィクションなのかそうでないのかよくわからない……。今回最後まで読んでみて、すべてのエピソードに出てくるワルデマールという美形ドイツ人が面白かった。ランカスター氏の使用人として主人公をベルリンのナイトライフ(これがまたヘテロがゲイか判別がつかない)に案内するこの男、たいして本気ではないがちょっと共産党寄りのせいでドイツに住みづらくなったので、イギリス貴族のお姉さまの恋人として海峡を渡るが、恋人の家族からは徹底して慇懃な階級差別をうけて沈没。やがてドイツに戻って、戦後は東ベルリンで機械工になり、あまりにも凡庸な家庭の父としてイシャウッドに再会する。おそらくイシャウッドがベルリンでセックスしていたドイツ人の若者の多くは、最終的にはこのような家庭を築いたのだと思う。タイトルは、手紙でよく使う「……に旅行で来ている」という言い回し。第四部で、かつては「世界最高の男娼」と呼ばれたポールが、イシャウッドの人生態度を評することばからきている。あんたはどこにいっても旅行客、本気じゃないのだと。
この本気のなさが、わたしにはイシャウッドのいちばん共感できる部分だし、三十年代イギリスの(アッパーミドルクラスの)作家たちに関心をもつ理由なわけだが。
西荻 Granpa's Dream でクラガンモアとマッカラン。すごくいい店ではあるけど、わたしの財布には見合ってないなあ。