身体医文化論Ⅳ 食餌の技法

一日翻訳の直し。

食餌の技法―身体医文化論〈4〉 (身体医文化論 (4))

食餌の技法―身体医文化論〈4〉 (身体医文化論 (4))

今日は「読まずに書く」。というのもこれは、一昨年の三月に慶應日吉でおこなわれたワークショップをもとにしたもので、わたしはほとんどすべてを口頭発表として聴いているのだ。編者二人はかなり実質的に役にたつダメ出しをする人なので(鈴木さん、その節はどうもありがとうございました)、たぶんよりよくなっているはずだが、慌しいときは、こうした本を読むのは後回しになってしまう。ともかくご恵贈ありがとうございます。中味はもちろん保証つき。特筆すべきは35ページにおよぶ巻末の文献案内。食文化の歴史と理論に関心があるすべての人に必見である。石塚さんのハードディスクには、さらに詳しい解説が載ったヴァージョンが鎮座しているのではないかという気がするが……
じつはこのワークショップのときは、なんともやるせない気分になった。身体医文化研究会のコアメンバーの半数以上は英文学者だし、この本も、半分近くが英文学系の論文といえる。フロアもその方面が多くなるのは当然だ。しかしそうしたフロアのかなりの割合、とくに若い参加者は、宇沢美子や(今回書いてないけど)大田信良といった業界のスターたちの話が終わると、さっさと帰っていってしまう。その後まだまだ面白い話が続くのに。なぜわざわざ日吉にきて、梅川純代の中国媚薬論とか、大道寺慶子の江戸消化器論、河野哲也の「哲学者の食卓」を聴かずに帰るのか。それほど忙しいのか、専門の話にしか関心がないのか。そもそも業界内の論文だったら、どうせ活字になったときに気がつくんだから、なにも口頭発表で聞かなくてもいいだろう。研究のコンテクスト(これは読むよりその場で耳で聞いたほうが断然わかりやすい)だって、読めばわかることが多いだろうし。専門外の話こそ、こうして学際的な場に来て聴くべきものではないのか。まあ、みんな余裕がないのだろうとは思う。しかし、そんな余裕のなさからなにかが生まれるとは、思いたくない。