エイハブぐるぐる巻き

ひたすら寝る。地震で起きる。西荻のインド中華料理屋「天竺」で、バングラデシュ人のシェフの作る焼ビーフンとか。美味。昔インドに行ったときも、いちばんうまかったのはカルカッタの安ホテル街の中華屋の炒飯だったなあ、とか思い出す。

『白鯨』アメリカン・スタディーズ (理想の教室)

『白鯨』アメリカン・スタディーズ (理想の教室)

ご恵贈ありがとうございます。テクストの抜粋+三日間の講義からなる「理想の教室」シリーズの一巻。他の書き手のラインアップを見ても、いい企画である。この巻は、徹底して「現代のモビイ・ディックの意義」を追って、話を時系列にも空間的にも広げまくる巽節。轟順平、梶原一騎影丸穣也のマンガ版、イングルスルードの舞台版などが的確に位置づけられる。メルヴィルがなによりマンハッタンの作家であるというのに納得。いちばん好きなのは、じつはエイハブ船長は(サイードとか、多くの人がまちがって覚えているが)ロープで白鯨の背中にぐるぐる巻きになどなっていない、という指摘。これは1956年版の映画のために、脚本のブラッドベリが付け足したシーンなのだ。そして巽さんは、ブラッドベリは原作を深く理解したうえで、ラストが下手だと考えてシーンを書き足した、このシーンをみんなが覚えているのは、原作よりも『白鯨』的だからだ、と断言する。作者のオリジナリティ信仰を必要以上にもたない書き手が文学の教科書を書くと、こうなるわけです。見習わないと。