願い星、叶い星

とにかく一編一編お腹いっぱい。通読するのにえらい時間がかかった。どれも頁数あたりのアイデア量が並のSFの七、八倍詰めこまれており、しかもなぜそのサブアイデアをこのメインアイデアと組み合わせているのかが、しばしばこちらの理解を超える。
冒頭の「ごきげん目盛り」は、分身ものの傑作かつ殺人ロボットもので、カミュ『異邦人』のパロディにもみえる。表題作は、ふつうに書くとシンプルなアイデア・ストーリーになるはずなのだが、超能力と巻きこまれ型暗黒小説と「恐るべき子ども」テーマと脳内閉塞がつっこまれている。「地上最後の男女」テーマと「都会ネズミ・田舎ネズミ」を掛け合わせた上に、主役二人が狂人という「昔を今になすよしもがな」にも唖然。中篇『地獄は永遠に』は、もう日記で簡単に応対できるレベルを超えているので、論評は諦める。必読。