動物の権利

軽い二日酔い。本の運びこみ、並べ替え。内観の撮影。

動物の権利 (〈1冊でわかる〉シリーズ)

動物の権利 (〈1冊でわかる〉シリーズ)

ピーター・シンガーのような功利主義的視点に近く、しかしもっと動物権利擁護的。とくに食肉の大量生産(工場畜産)への批判精神が強い。ただ、ヴェジタリアニズム擁護論は慎重に避けられている。「動物は死を怖れることはできないから、動物に苦痛を与えることは不当でも、死を与えることはそうではない」という議論に対して、「死は、生の継続が可能にする貴重な機会を閉ざしてしまう限りにおいて、危害である。……たとえ(生を奪われる)彼ないし彼女がその機会について自覚していないとしても」(p.90)という視点で、まっこうから反論しているところが、いちばん説得された。
動物のあいだに道徳的尊重の対象としてヒエラルキーを作る(虫よりイカタコ、イカタコより魚、魚より鳥、鳥より犬……)スライディング・スケール・モデルを、根拠が不明瞭であると批判して、さまざまな種の「平等な配慮」を主張している。ただ訳者解説によると、もっと分厚い主著では、大型類人猿やイルカの生存権を大きくみているらしく、このへんなんだかよくわからない。わたしのようなとくべつ動物好きでない人間からすると(うちの鳥はあくまで妻の鳥だ)読んでいてもどかしいのは、人権が当然の前提とされ、動物の権利は人間の権利になぞらえて理解されることを求められる点だ。動物の権利について突き詰めて考えれば、そもそも人権なるものが疑われなければならないのに。