ヴィーナス・プラスX

銀行。NTT武蔵野営業所があると思ったところに行ってみて、平成十五年!十二月に閉鎖されていたことを初めて知って驚愕。成城でイアン・リトルウッド氏と食事。サセックスも最近はせちがらく、留学生センターの仕事など大変とか。特殊講義、英文購読。
仕事で事務上の大チョンボをしていたことに気づく。もしかして読んでいる方がいないとも限らないので念を押しておくと、英語のチーム・ティーチングに関する話ではございません。

ヴィーナス・プラスX (未来の文学)

ヴィーナス・プラスX (未来の文学)

いわばスタージョン版『ユートピア便り』。未来の暴力なき両性人間レダム人の社会にタイムワープした男が観察するこの社会のありさまと、現代の凡庸な中産階級夫婦の生活が、交互に語られる。後者の淡々とした、膨大な量の商品名に彩られた文体がさすが。
スタージョンはセックスに肯定的な作家だ。そして、カタツムリのような相互交尾がおこなわれているこの未来社会は、ジェンダーなきセックスの楽園だ。読んでいながらずっと、この小説は、ジェンダーの不均衡こそが人間の暴力性の根源にあると訴え、その二つが消えた社会をとりあえず肯定すること(もしかして最後にひっくりかえしてその限界を暴くこと)が狙いだと思っていたが、あさはかでした。その程度のひねりじゃありません。狭義のジェンダーというより、快楽を全肯定するユートピアはいかにして持続可能か、という問題がむしろ主眼か。現代のストーリーラインのほうの主人公、ハーブは、そこそこに、たぶんわたしと同程度に幸福だ。レダム人社会は、その幸福を「愛」とともに増大させていくことは可能なのか、という思考実験の場だということか。