不平等か、不自由か

日本とフランス 二つの民主主義 (光文社新書)

日本とフランス 二つの民主主義 (光文社新書)

後半で細かくフランスのことが書かれているが、むしろ「日本に社会民主主義左翼政治がないのはどういうこった」を明快に説いた本。教科書に使おうかとまじめに考える。戦前の国家統制社会を批判する立場をとった戦後日本の左翼は、「自由」「市民参加社会」といった概念を奉じて、むしろ「リベラル」な、ヨーロッパ的感覚では右寄りの発想に近づいた、というのが基本ライン。もともとなぜか左派のものだった「自由・反官僚」を小泉自民党が高々と宣言するいま、政治の対立軸もどっかに消えている。
左翼政治は必然的に中央集権的である、とはっきり書いているのが潔くていい。現在社会民主主義的政策は、「セーフティ・ネット」といったことばで呼ばれることが多いが、それが官僚制や中央集権(さらにはエリート主義)を当然ともなうものだという点は、朝日的な物言いではけっこう曖昧にされるからね。