サイード OUT OF PLACE

エドワード・サイード OUT OF PLACE』試写会@中野ZERO。佐藤真監督の挨拶つき。ここの視聴覚ホールは初めてきたが、ちゃんとした設備だ。佐藤映画は『阿賀に生きる』を見たきりで、その後離れている。良いものだとわかっていても継続的に追うということをしないのは、人格的な欠陥だと思う。
監督も言っていたとおり、ニューヨークとアラブ側とイスラエル側、インタヴューの量は三等分という感じ。サイードがかつて住まっていたベイルート郊外や、カイロのナイル中洲の住宅地の風景が美しい。レバノンの難民キャンプでは、郊外の強い日差しと対照的な、いつまでも乾かないごみごみじめじめとした触感に、大家族の笑顔がかぶる。コーヒー屋の兄ちゃんが、翌日売るコーヒーを圧力ストーヴ(登山で使うようなやつの巨大版)で煮るシーンがすばらしい。ガウリ・ヴィシュワナサンはじめ、コロンビアの同僚たちは、それぞれアクセントの違う英語で語る。シリアのアレッポ生まれのユダヤ人おばさんの料理が、じつにうまそう。これは以前四方田犬彦本のときにも触れたが、イスラエルは「ユダヤ人国家」であっても、その「ユダヤ人」が、もはや一民族とはとうてい思えない多様な移民の集合なのだ。各都市の遠景は、だいたい乾いた白と青空にもとに撮られているのだが、最後の最後で、バレンボイムの弾くシューベルトをバックに雨が降る。日本人にとっては、難民キャンプの湿気が、もっとも「なじむ」風景なのかもしれない。
追記 http://urag.exblog.jp/3311028/ もご参考に。