フィニ

文学理論期末試験監督。試験直前なので臨時にe-learning オフィスアワー、もっともお客はあまりこなかった。スコールのごとき雨が断続的に降る。東京は熱帯になったらしい。
レオノール・フィニ展BUNKAMURAザ・ミュージアム。『夢先案内猫』のファンとして、あまり絵には期待せずに行ったが、予想よりずっとよかった。初期のものはともかく、五十年代以降の「鉱物の時代」、とくにムーアの彫刻みたいな男女?が向かい合う「鉱物の対話」(1960) ――s-matsuさん、リンク利用させていただきました――が魅力的。人体と刃物と石が一体化するサイバーパンク的なものもあり。もっと後年の、透明感を増したものも悪くない。自宅を映したフィルムも観たが、しかしこの家の猫は、彫像にいたるまでデブ猫ばかりだな。フィニの夢を案内する猫は、のたのたと、『モモ』のカメのカシオペアのごとく歩いていたのか。肉食獣の敏捷さかけらもなし。
松涛のポルトガル料理屋「マニュエル」で蛸サラダとか豚のマデイラ風味のクリームソテーとかリゾットとか。どれもこれも本当においしく、気取らないサービスも感じいいけど、料理の出てくるのが遅い。同居七年目の、しかも昼間はかたや試験監督かたや画像処理という退屈な仕事を終えたばかりで話題などなにもない夫婦は、皿の合間に黙って虚空を睨んで不機嫌になり、料理が届いて一口食べると幸せになり、を繰り返す。今日はずいぶん何度も幸せになった。よい一日だったようだ。

夢先案内猫

夢先案内猫